「2018年6月16日 児童養護施設における”無国籍”調査報告」のレポート

「2018年6月16日 児童養護施設における”無国籍”調査報告」のレポートです!
当日の様子・内容が書かれています。

「2017年 児童養護施設における外国につながる子どもと無国籍に関する実態調査」報告

2018年6月16日、早稲田大学にて、石井香世子教授(立教大学社会学部)による「2017年 児童養護施設における外国につながる子どもと無国籍に関する実態調査」と題した発表が行われました。

最初に、タイの山地民とともに生活しながら研究をされていた経験を、ご自身の写真も含めて紹介され、ご研究の中で無国籍の問題があることを認識し、無国籍についての調査を行うことになったという経緯をご紹介されました。次に無戸籍と無国籍といった、従来混乱しやすい概念について説明され、無戸籍者は親が日本国民であると考えられることが多いのに対して、無国籍者の親は日本国民でなく、どの市民権も行使できない方々を指すと説明されました。また、法の文言によって無国籍となるという狭い意味での無国籍に限らず、市民権を行使できない環境にいる人々を無国籍者と捉えていると説明されました。日本において無国籍が問題化しない理由は無国籍者の実態が知られていないことであると考えられるため、日本にいる無国籍者の実態の一部を明らかにすることを目的として、全国の児童養護施設にアンケート調査を行われました。

多忙な児童養護施設からのアンケートの回答率を上げるために、わかりやすい選択肢を用意することに努め、600の施設にアンケートを配布したところ、300の有効回答があったと紹介されました。国籍がない(かもしれない)と思われる子どもがいたことはあるか、もしくは現在いるか、との質問への回答からは、無国籍と思われる子どもが児童養護施設にいる割合にばらつきがあり、都道府県別の在留外国人の人数が多い県で必ずしも無国籍と思われる子どもの数が多いわけではないことが指摘されました。また、在留外国人の人数と児童養護施設における無国籍と思われる子どもの数には相関関係がないことも指摘されました。さらに、無国籍と思われる子について国籍取得に関する相談をしたことがあるか、という質問への回答からは、役場の戸籍課、法務局、弁護士に相談する事例が多い一方で、国籍取得率は児童相談所や弁護士に相談した際に高いことが指摘されました。

後の質疑応答では、実態調査の対象を、児童相談所でなく児童養護施設にした理由に関する質問が投げかけられ、児童相談所によるアンケートへの協力は困難であると考え、児童養護施設への調査を実施したと説明されました。無国籍者の実態を明らかにすることの困難さを認識するとともに、無国籍者の実態の一部が垣間見れる貴重な発表でした。

 

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無国籍ネットワーク運営委員 秋山 肇

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